たまにライトノベル

2023年ライトノベル10選

来たね。ミステリーが。ライトノベルの潮目を変える激流の時代が

ってのが理想なんだよな。でも現実はまだそんな時代来てない。分かってますよ、そんなこと。これが個人的な理想であることも

それでも流れが変わる気配は僕だけではなくライトノベルの読者であるならば感じていることだろう。であるならば、叫ばせてもらおう

 

ミステリーの流れがライトノベルに来ていると!!!!!

増加する凶悪犯罪に対抗し、探偵という職業の必要性が飛躍的に高まった現代。
日本で唯一「国家探偵資格」を取得できる超難関校・真理峰探偵学園に今年、とある少年と少女が入学する。
一人はかつて〈犯罪王〉と称された男の孫・不実崎未咲。
もう一人は〈探偵王〉の養女・詩亜・E・ヘーゼルダイン。
宿敵同士の末裔二人が、ここに邂逅したのだ! 
そして始まる学園の日々。早速入学式から模擬事件が発生!?
しかも、一番先に正解したはずの詩亜よりなぜか不実崎の方が点数が高くて──
「私は──あなたに挑戦します!」
「後悔すんなよ、お姫様」
これは、真実を競い合う新たな学園黙示録。最高峰の知的興奮がここにある!

 

俺がお前らにミステリーの楽しさを懇切丁寧に教えてやるよ!!!

捻くれた読み方をするならそういう感じの作品です。紙城境介の前作『僕が答える君の謎解き』は作者自らが自身に対して本格ミステリも書けるんだと自画自賛していたが、ライトノベルの読者からの評価はそこまで高くはならなかった。だからなのだろうか?今作は二巻までミステリである以前にエンタメであることを強く意識している(ミステリがエンタメであることは前提として)。今後この作品がどういう方向に進むかは分からないがどちら、あるいは両方を選択したとしても二巻までがそうであるように面白い作品になるのだろうと信じている。

僕のようなミステリ初心者にも楽しく読んでもらえるようなライトノベルだと思います

 

 

年が明けてからもずっと「冬」が続くという異常気象。
気温のあがらない夏、九月に降る雪。コメの収穫は絶望的で、原油価格は上昇し続け、消費は冷えこんでいる。もう世界は終わってしまったのかもしれないと、人々は日に日に絶望を深めていった。

神奈川県の出海町にある海水浴場も一面雪で覆われ、サーファーも釣り客もヨットのオーナーも姿を消した。この町で育った高校生、天城幸久にはこれまで想像もつかなかった光景だった。降り続く雪でリモート授業も今では当たり前になっている。世界はもうすっかり変わってしまったのだ。

雪かきスコップを手に幸久は近所のとある場所へとやってくる。
金属製の門をくぐった先には、前面が総ガラス張りの変わったデザインの家が建つ。その敷地内で雪かきをしている女の子がいる。高校からこの町へ越してきた同級生、真瀬美波だ。彼女はこの家にひとりで住んでいる。
幸久は彼女の家へと通い、雪かきを手伝うことが日課になっている。

幸久と美波はすでに交際しているのだが、学校ではほとんど会話もしないため、クラスメイトたちは誰もその事実を知らない。
雪に閉ざされた世界のなか、二人は秘密のデートを重ねていく。

 

なんというか僕たちは少年少女の限界に意味を持たせすぎてたんじゃないだろうか?皆さん『秒速五センチメートル』『天気の子』は好きですか?僕は好きです。ポストコロナのライトノベルは今年そこそこ出てきましたが、この作品はコロナ禍のメタファーとしては上手く機能していない。それでも今年最もセカイ系の文脈で新海誠とは違う回答を叩きつけたライトノベルだとは言えるだろう。途中から純文学テイストの文章も出てくる石川博品の作風の広さも見どころである。

 

 

普通の高校生・湯上秀渡は事故をきっかけに『並行世界を行き来する力』を手に入れ、それ以来"理想的な青春"が存在する並行世界を数多く渡り歩いていた。憧れの幼なじみ・友永朝美との交際、ミステリアスな先輩との生徒会、思春期な義妹との生活など──面白い世界を見つけて好きに選べるなんて最高!……しかし、突然『全ての並行世界が1つに統合される』現象が起き世界が急変。各世界のヒロイン達全員が同じ世界に現れてしまう!
さらに、友永朝美に乗り移った"未知の並行世界の朝美"から「世界の統合は秀渡君が修復できる」といきなり告げられ……? 
新世代がエモーショナルに描く、カオスSF青春劇開幕。

 

最近のラノベSF実際すくねぇだろ!?つって切れてたら普通に出てきたよね。オタクジャンルで絶対出てくるような量子力学の話が続いてくけど、後半からの展開は魂を感じる出来に仕上がってるので読んでみて欲しい。俺つばのストーリー部分に影響を受けてるようなラノベあるんだなと思ったよ

 

 

彼女を推すことに青春の全てを捧げ、V界隈でも名を馳せていた高校生の苅部業は、乃亜の魂の醜態がネット上に晒され、大炎上したことで人生が一変する。
「おれはあの夜に死んだ……」
運営から推しの臨終を告げられ絶望した業は、高校を休学し一年後VTuberの炎上ネタを扱うブロガーとして日々を過ごしていた。
そんな業の元に『自分のVTuberを炎上させてほしい』という依頼を持ち込む美少女、小鴉海那が現れ――。
「これは人助け……いえ、VTuber助けみたいなものです」
『推し』の最期をプロデュースする救済と再生の物語

 

推しって言葉キモイよな。分かるよ。ニコ生の配信者が絵被っただけで持て囃される文化意味わかんねぇよな。分かるよ。それでも喪失と再生というテーマは普遍的なものであり上手くやれば響くものがあるだろう。そして僕は推しってやつを上手く理解できないがこれも一つの喪失と再生の物語として成り立っているのは分かる。そういう力強さを感じる物語だ。

そもそも妻が亡くなってからの再生とかも結婚すらしてねぇんだから別に特別感情移入出来ないしな……

 

 

磯原めだかは、人とはちょっと違う感性を持つ女の子。
ちいさく生まれてちいさく育ち、欲望らしい欲望もほとんどない。物欲がない、食欲がない、恋愛に興味がない、将来は何者にもなりたくない。できれば二十歳で死にたい……。

オナラばかりする父、二度のがんを克服した母、いたずら好きでクリエイティブな兄、ゆかいな家族に支えられて、それなりに楽しく暮らしてきたけれど、就職のために実家を離れると、事件は起こった。上司のパワハラに耐えかね、心を病み、たった一ヶ月で実家にとんぼ返りしてしまったのだ。

逃げ込むように、こころ落ち着くバスタブのなかで暮らし始めることに。マットレスを敷き、ぬいぐるみを梱包材みたいに詰め、パソコンや小型冷蔵庫、電気ケトルを持ち込み……。さらには防音設備や冷暖房が完備され、バスルームが快適空間へと変貌を遂げていく。

けれど、磯原家もずっとそのままというわけにはいかなくて……。

 

面白かったんじゃないですか

 

 

“妖精の淑女”と渾名されるイカサマ霊媒師・グリフィスが招かれたのは、帝国屈指の幽霊屋敷・涜神館。
悪魔崇拝の牙城であったその館には、帝国が誇る本物の霊能力者が集っていた。
交霊会で得た霊の証言から館の謎の解明を試みる彼らを、何者かの魔手が続々と屠り去ってしまう……。
この館で一体何が起こっていたのか?
この事件は論理で解けるものなのか?
殺人と超常現象と伝承とが絡み合う先に、館に眠る忌まわしき真実が浮上するーーーー!!

 

ミステリとしてはずば抜けた面白さだった思う。超能力者が出てくる特殊設定ミステリって奴なんだろうが論理と超能力のバランスが本当に良かったよ。悪かったところは犯人が分かってから展開が適当過ぎたところ。今年ミステリのラノベ読みたいならこれしかない!!!

 

 

2025年。
人類観測史上最大規模の太陽フレアが発生、突然の磁気嵐が地球を襲った。
その影響で起こった大規模停電により、日本は通信、インフラがストップする異常事態に陥る。
その日、東京・渋谷で偶然初恋の女性・水星と再会した元自衛官の陸は、水星の妹・金星から大規模停電の理由と、「ある事実」を知らされる。
文明が停止し、パニックに陥る東京ーーそんな状況下で、かつての想い人の命と、東京に危機が迫っていた。
自身の姉の命の為にもじっとはしていられない金星と、自らできることは何があるのか迷う陸。
情報、交通手段、手助けなし。
出会ったばかりの金星と陸、たった二人の任務が始まった。

 

物語に触れるときは癖でテーマ中心に読み解こうと自然になってしまって、だから読んでる途中にそういう考えが全然浮かばない作品って僕にとっては少ないんないですよ。特にラノベサブカルチャーの中でもテーマ性を重視してる作品が多いので。でもこのラノベ読んでてテーマが気になんないんですよ。無いわけじゃないけどそれ以上に面白いポイントが多数に散りばめられていて気にならない。

読者に「面白かった」の一言で終わらせたくなる作品は決して作者が何も考えず書いてるわけではなく、語らせない強さを持った作品だと思う。そんな一作です。

 

 

人類滅亡の危機が発表されてから二年が経ち、世界はとっくに恐怖することに疲れていた。誰もが、どうしようもない現実を忘れてダラダラと毎日を過ごしている。そんな、人類最後の夏休み。
夢を投げ出した少年はずっと好きだった幼馴染との距離感がわからず戸惑い、スランプ中の文芸部部長は場末のゲーセンでゾンビをド派手に蹴散らす少女と出会い、やさぐれモード全開の女子高生は謎だらけの転校生を尾行し、重大な秘密を抱える少女は廃墟マニアの恋人との最後のデートに臨み、ひねくれ者の少年は女子高生監督に弱みを握られて人類最後の映画を撮る――。
どうせ終わる世界で繰り広げられる、少年少女のひと夏の物語。

 

エモぶってちゃぁ!!!!!切実さなんて出ねぇんだよ!!!!!!!!!!!出ないの。エモぶってるだけのライトノベルに切実さなんて。ポストコロナの作品としてただメタファーやって終わるんじゃなくて、世界の掘り下げとその世界に生きてる人間たちの切実さを抽出することを重視してたこのラノベ愛です。物語を愛してなくちゃこんな小説は書けないだろうし二重で愛です。物語が好きで物語を信じているオタクにお勧めしたい。

 

 

真面目な生徒会長、清瀬まつり。彼女が放課後ラブホテルで何しているのか、その秘密を知ってしまったことから、おれと彼女の関係は始まった。ホテルでおれに見せるまつりの表情は、学校の物とはまるで違っていて――

 

愛で世界が救われんのかよ。世界を肯定出来ない人間が愛だけで全部救えんのかって言ってんの!!!!!!

………てかもう我慢できないから瀬戸口廉也の話するんだけど、carnivalみてぇな作品だなぁと思ったよこれ。ただ違うのはオスカーワイルドばりの皮肉を効かせながら、それでも世界を愛そうとした魂の文章があること。carnivalの「片思いだ」はガチで最高の台詞だが全てを諦めているようなmusicus!以前の瀬戸口廉也の文章であり個人的に気にくわないんですよね。『生徒会長との待ち合わせは、いつもホテル。』がハッピーエンドだとは思わないが、それでも彼と彼女が生きていくのだろう。そう信じさせてくれるような物語だ。今年の新作マイベストです。

 

 

魔王が倒されてから四年。平穏を手にした王国は亡き勇者を称えるべく、数々の偉業を文献に編纂する事業を立ち上げる。かつて仲間だった騎士・レオン、僧侶・マリア、賢者ソロンから勇者の過去と冒険話を聞き進めていく中で、全員が勇者の死の真相について言葉を濁す。「何故、勇者は死んだのか?」勇者を殺したのは魔王か、それとも仲間なのか。王国、冒険者たちの業と情が入り混じる群像劇から目が離せないファンタジーミステリ。

 

今年このラノにこの作品が入れれたらどうなってんただろうとは思う。それぐらい完成度が高く万人受けする物語で、ライトノベルでもちゃんと面白いと評価されて売れる事があるんだなって希望を持てる作品だったね。ミステリ要素もあるしこれが一位獲ってたら来年マジでミステリブーム来そうだなぁって感じだったけど……

それはそれとして今年ラノベ普段読んでない人間に一冊進めるとしたらこれ以外ないと思う。外した作品を読みたくない人間にとっては優等生な一冊。

 

 

いや~どうでしたか?皆さんにとって今年のライトノベルは。僕はラブコメの流れが少し変わりそうで良かったですけど。まぁ来年どうなってるかなんて分からないんでね。祈りながら待ちますよ。この調子で面白いライトノベルが出てくることを

 

 

ライトノベルランキング

 

一位 りゅうおうのおしごと!

二位 楽園ノイズ

三位 わたし、二番目の彼女でいいから。

四位 生徒会長との待ち合わせは、いつもホテル。

五位 十五光年より遠くない

六位 負けヒロインが多すぎる!

七位 シャーロック+アカデミー

八位 ミモザの告白

九位 誰が勇者を殺したか

十位 冬にそむく

 

もういつメン過ぎて語る事がねぇわ。ただ一つ語りたいことがあるとすれば『りゅうおうのおしごと!』だな。ここ二年ぐらいの対抗馬がいなくての一位と言うよりはいても絶対に勝てないだろうなと思えるぐらいの魂の一冊だったと思う。18巻は。AIと人間をテーマにした小説として長谷敏の『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』に全然負けてない人間性の回帰のSFとして傑作だったから。まぁあなた方は読まないんでしょ?作者がキモいもんな。いや作者が嫌いで読んでない作家なんて僕もいるんで別に良いんですけど………

いや嘘。多分来年完結するんで完結したら一気に読んでみてください。マジで面白いんで。

 

それではまた来年